第5回TSUKUBA憲法レクチャー「女性の健康―リハビリテーションからのアプローチ―」を開催

2022年12月28日

2022年12月8日(火)、第5回TSUKUBA憲法レクチャー*(主催:社会・国際学群、後援:学群共通科目部会)にて、「女性の健康―リハビリテーションからのアプローチ―」と題して、大阪公立大学講師で理学療法士である森野佐芳梨先生にご講演いただきました。司会は、秋山肇助教(人文社会系)が務めました。

ご講演は、妊婦への腰痛等の産前、産後も長期間継続する体の痛みに対してリハビリテーションからどのようなアプローチができるか、どのようなアプローチが適切かというようなお話でした。周産期女性への治療介入においては、母体や胎児への影響から、反作用のある薬物や侵襲のある治療ではなく、リハビリテーション分野からのアプローチが不可欠なようです。そうであるにもかかわらず、先行研究では、多くが、妊婦の腰痛を一般成人のものと同視したものであったこと等、実体を必ずしも反映したものではなかったとのことでした。また、日本では、産婦人科医や助産師、整形外科医において、理学療法によるアプローチが妊産婦にとって効果的であることがあまり知られておらずそのようなことも課題であるというお話がありました。アメリカやフランスでは、理学療法によるアプローチが効果的であることは広く知られており、特にフランスでは、産後1年間の理学療法士によるリハビリテーションが全額保険適用されると話されました。

講演後には、質疑応答の時間も設けられ、法政策学、文化学的な領域等様々な質問が活発になされました。その中では、人種間の性教育や性格、欧米では、出産に対してオープンに女性が意見を述べるのに対して、アジア圏では「出産に対して女性が痛みを伴うべきだ」などとする価値観の流布により、当事者たる女性が出産によって伴う苦痛に対してあまり発言ができないことも研究や正しいアプローチの普及を阻害しているのではないかという議論もありました。

講演後に実施されたアンケートでは、国による制度の整備を求める声が上がったと同時に、社会において広く理学療法的なアプローチの重要性や、女性の出産に伴う苦痛に対しての認識の普及をしていかねばならないとの意見が多く見られました。

憲法14条は、いわゆる「法の下の平等規定」と言われています。国は、出産によって女性が長期間にわたって実質的に不当な立場に置かれぬように制度を敷く必要があるでしょう。しかし、憲法12条によれば、私たちは、自由や権利を私たち自身の不断の努力によってこれを保持しなければならないとされています。講演をお聞きした私たちが、旧習の下に沈黙せずメッセージを発信していくことが必要であると強く感じました。

文責:社会学類3年 能地康太

* TSUKUBA憲法レクチャーとは

専門の異なる様々な学生が集まる筑波大学で、多様な視点から憲法に関心を持っていただき、「TSUKUBA」ならでは憲法の学びの機会を提供するレクチャーシリーズです。SDGsにも関連した題材を扱っています。第5回は、目標3「すべての人に健康と福祉を」に関連するレクチャーとなりました。