第8回TSUKUBA憲法レクチャー「ファンダム 熱狂の原理—自律分散化する時代の幸福論」を開催

2024年2月8日

2023年12月14日に第8回TSUKUBA憲法レクチャー(主催:社会・国際学群、後援:学群共通科目部会)が行われました。今回は「ファンダム 熱狂の原理—自律分散化する時代の幸福論」と題し、KIMINORI JAPANの代表であり、企画・音楽プロデューサーとして活動されている伊藤公法さんにご講演いただきました。司会は、秋山肇助教(人文社会系)が務めました。

司会の秋山肇助教

ご講演では、熱狂がどのように生じるかについて、中央集権的なアーティストと自律分散的なファンコミュニティが共に信じることができる社会的イシューの重要性についてご説明いただきました。社会的イシューとは「自分の感性で信じる正義」のことを指し、具体的な例としてK-popの世界的な普及を取り上げられました。彼らの音楽が国境を超えたのは、アメリカを中心にBlack lives matterの活動が行われたことで人種に対する社会的な見方が変化したという時代的背景が関係しており、人種に関わらず多くの人々が社会的イシューを信じることができるタイミングであったと述べられました。また、日本の感性や創造性も世界に広め、次世代へと繋いでいく必要があることも話されていました。

講演者の伊藤公法さん

一方で、熱狂が幸福を生み出しているのかという問いや、熱狂が分断を生み出していないかという問いも投げかけられました。ダンバー数と呼ばれる、人が互いに認知し合い社会的交流を保つことができる人数は限界があり、インターネットが普及した今の社会では大勢のユーザーに対してYESかNOの立場を取ることで所属先を感じることができ、その結果二極化しているという問題点が挙げられていました。

 最後に、ファン集団だけでなくファン活動や文化的価値も内包するファンダムという言葉は、国家を表すキングダムのような国家的な共同体であることを示唆しており、ファンダムが国家を超えた一つの共同体、つまり人々の所属先になる可能性についてもお話しいただきました。

講演者の伊藤公法さん

講義後には質疑応答の時間が設けられ、憲法学的な立場からファンダムと国家の共通点と違いについて、政治学的な観点から熱狂とポピュリズムの関係についてなど、参加者から多くの質問が上がり、活発な議論が交わされました。

グローバル化が進み、技術的にも人々の意識的にも国家や言語、人種を超えて音楽を楽しめる時代に変化してきたように思います。この環境が作られたことで、自分自身と世界中のファンとアーティストが同じ社会的イシューを理解し、信じることができるようになったのだと思いました。コンテンツそのもののだけでなく、アーティストと世界中のファンと共に熱狂できる点が音楽の良さであると感じました。

文責:社会学類2年 金子暖

* TSUKUBA憲法レクチャーとは

専門の異なる様々な学生が集まる筑波大学で、多様な視点から憲法に関心を持っていただき、「TSUKUBA」ならでは憲法の学びの機会を提供するレクチャーシリーズです。SDGsにも関連した題材を扱っています。第8回は、目標8「働きがいも 経済成長も」に関連するレクチャーとなりました。